
野生の生き物を自分の目で探し、本来暮らしている環境の中で観察するフィールドハーピング。
私たちは、こうした野生動物との出会いには大きな価値があると考えています。
図鑑や写真でしか知らなかった生き物を、初めて野生で見たとき。
その生き物は、単なる名前や写真ではなく、「この世界に本当に生きている存在」になります。
どんな環境で暮らしているのか。
何を食べ、どこに隠れ、どのように季節を生き抜いているのか。
実際のフィールドに立つことで、写真を見るだけでは分からなかったことが見えてきます。
そして、その一度の出会いが、
「この生き物がこれからもここで生き続けてほしい」
と思うきっかけになることがあります。
WildHerping & Co.が、世界各地で野生動物との出会いをつくっている理由もそこにあります。
私たちが目指しているのは、単に多くのツアーを催行することではありません。
野生動物が野生のまま存在することに価値が生まれ、その自然を守ることが、そこに暮らす人々や地域にとっても価値になる。
そんな仕組みを少しずつつくっていきたいと考えています。
その一方で、私たちがフィールドに入る以上、生き物やその生息環境への影響を完全にゼロにすることはできません。
歩くこと。
石を動かすこと。
ライトを当てること。
写真を撮ること。
どれも程度の差はありますが、野生動物やその環境に影響を与える可能性があります。
野生動物との出会いをつくるために、その野生動物や生息環境を傷つけてしまっては意味がありません。
だからこそWildHerping & Co.では、
「どうすれば生き物を見つけられるか」だけではなく、「どうすればその生き物と環境を未来に残せるか」を考えながらフィールドに入ること
を大切にしています。
それが、私たちが考える Ethical Herping です。
1. 「見つけること」より、生き物への影響を考える
野生動物は、私たちに観察されたり、撮影されたりするためにそこにいるわけではありません。
捕獲する、触る、移動させる、長時間ライトを当てる、撮影のために何度もポーズを変えさせる。
こうした行為は、観察する側にとってはわずかな時間でも、動物にとってはストレスになる可能性があります。
特に撮影では「もう少し良い写真を」と、気付かないうちに観察時間が長くなりがちです。
必要以上に触らない。
必要以上に動かさない。
長時間追い回さない。
観察や撮影が終わったら、その個体が本来の行動に戻れるようにする。
シンプルですが、こうした意識が重要です。
2. 歩いて探すときは、足元にも生息地がある
フィールドを歩きながら探す方法は、比較的環境への影響を抑えやすい方法です。
しかし、人が歩くだけでも影響がゼロになるわけではありません。
植生を踏みつけたり、湿った落ち葉や倒木周辺を荒らしたり、同じ場所に多くの人が繰り返し入ったりすれば、小さな環境が少しずつ変化していきます。
特に意識したいのが、**microhabitat(微小生息環境)**です。
一見するとただの倒木、岩の隙間、落ち葉の堆積に見えても、爬虫類や両生類にとっては適切な温度や湿度が保たれた重要な生活空間かもしれません。
また、狭い隙間に逃げ込んだ個体を無理に引き出すことも避けるべきです。
個体を傷つけるだけでなく、その生息環境そのものを壊してしまう可能性があります。

3. 石や倒木をひっくり返したら、必ず元に戻す
ヘビやトカゲ、サンショウウオなどを探す際によく行われる方法の一つが、石や倒木などの下を確認する「フリッピング」です。
しかし、自然物を動かすことには注意が必要です。
石や倒木の下には、外からは見えない独特の温度・湿度環境があります。
そこを利用しているのは、探している爬虫類や両生類だけではありません。昆虫やその他の小動物を含め、多くの生き物にとって重要な生息環境になっています。
そのため、石などを動かした場合は、できる限り元と同じ位置、同じ状態に戻します。
元通りに戻せないほど大きな石や倒木なら、最初から動かさないという判断も必要です。
また、人工的な板やトタンなどであっても、長期間その場所に置かれていれば、動物にとって重要な隠れ場所になっていることがあります。
「人工物だから何度動かしても大丈夫」というわけではありません。
4. 繁殖地や越冬場所は特に慎重に
すべての場所を同じように扱ってよいわけではありません。
越冬場所、繁殖場所、産卵場所、妊娠した個体が集まる場所などは、特に慎重に扱う必要があります。
こうした場所では、一度の攪乱だけでなく、多くの観察者が繰り返し訪れることによる累積的な影響も考えなければなりません。
珍しい生き物が見られる場所ほど、人が集まりやすくなります。
だからこそ「見つけたから近づく」のではなく、ときには距離を取って観察する、触らない、周囲の環境を動かさない、長時間滞在しないという選択が必要です。
5. クルージングでは安全と動物の進行方向を優先する
夜間、道路を走りながら爬虫類・両生類を探すクルージングは、世界各地で行われている方法です。
道路上ではロードキルの危険があるため、安全に行える状況で個体を道路外へ移動させることが、その個体を助けることにつながる場合があります。
その場合でも、まず優先するのは人間の安全です。
そして個体を移動させる必要がある場合は、基本的にその動物が向かっていた側へ移動させます。
反対側へ戻すと、再び道路を横断しようとする可能性があるためです。
もちろん、道路交通法や各地域のルールを守り、他の車両や周囲の人に危険を生じさせないことが前提です。

6. フィールドからフィールドへ「病原体」を運ばない
見落とされやすい問題の一つが、私たち自身による病原体の移動です。
爬虫類・両生類では、ツボカビ、ラナウイルス、ヘビの真菌性疾患など、野生個体群への影響が懸念される病原体があります。
ある場所で使用した長靴やウェーダーなどに泥や有機物が付着したまま別のフィールドへ移動すると、人間が病原体を運ぶ経路になる可能性があります。
そのため、異なるフィールドへ移動する際には、泥や落ち葉などの有機物をしっかり落とし、必要に応じて装備を適切に洗浄・消毒することが重要です。
特に複数地域を案内するガイドや、短期間に複数のフィールドを訪れる人ほど意識したいポイントです。
7. 観察場所をSNSで公開しない
野生動物を守るうえで、もう一つ重要なのが位置情報の扱いです。
珍しい生き物を見つけると、写真と一緒に場所を共有したくなるかもしれません。
しかし、一度インターネット上に公開された情報を完全にコントロールすることはできません。
投稿を見た人がその場所を訪れ、さらに別の人へ共有することで、短期間に多くの人が同じ場所へ入る可能性があります。
特に繁殖地、越冬場所、希少種の生息地などについては、具体的な地名、GPS情報、場所を特定できる写真などの公開には慎重になる必要があります。
また、誰かから教えてもらった観察場所を、その人の許可なく第三者へ共有しないことも、フィールドでの大切なマナーです。
WildHerping & Co.のツアーでも、観察地点のGPS情報や詳細な場所については公開・共有しないようお願いしています。
これは秘密にすること自体が目的なのではありません。
その場所に暮らす野生動物と、その環境を守るためです。

8. 一人の影響ではなく「積み重なった影響」を考える
「石を一つ動かしただけ」
「写真を数枚撮っただけ」
「一度だけ入っただけ」
一人だけを見れば、大きな影響には感じられないかもしれません。
しかし、有名になった場所に何十人、何百人もの人が訪れ、同じ石を動かし、同じ個体を撮影し、同じ場所を歩けば、その影響は積み重なっていきます。
だからこそ、自分一人の行動だけではなく、「みんなが同じことをしたらどうなるか」を考えることが大切です。
フィールドハーピングを楽しむ人が増えること自体は、悪いことではありません。
むしろ、実際に野生動物を見ることで、その生き物に興味を持ち、自然を大切にしたいと思う人が増える可能性があります。
だからこそ、フィールドに入る人が増えるほど、一人ひとりの行動が重要になります。
野生動物との出会いを、未来につなげる
私たちは野生動物を探しにフィールドへ入ります。
しかし、その場所は私たちのために存在しているわけではありません。
その夜に目的の生き物を見られることよりも、その個体が翌日も、翌年も、その先も同じ環境で暮らしていけることの方が重要です。
そして私たちは、野生動物との出会いを減らしたいわけではありません。
むしろ、より多くの人に、本当の野生動物と出会ってほしいと考えています。
野生の生き物を実際に見る。
その生き物が暮らしている森や川、島、地域を知る。
そして、
「この生き物が、これからも野生のままここにいてほしい」
と思う人が増えていく。
そうした一つひとつの出会いが積み重なれば、野生動物がそこに存在すること自体が価値となり、その生息環境を守ること、そしてその自然とともに暮らす地域を支えることにつながっていくと、私たちは考えています。
だからEthical Herpingとは、単に「生き物に触らない」「石を元に戻す」といったルールだけではありません。
野生動物との出会いを楽しみながら、その出会いを未来にも残していくための考え方です。
生き物だけを見るのではなく、その生き物が暮らしている環境を見る。
写真や思い出を持ち帰り、フィールドへの影響はできる限り小さくする。
そして、その一度の出会いを、その生き物や自然を大切にする理由につなげていく。
人と野生動物をつなぎ、自然を守ることに価値のある未来をつくる。
それが、WildHerping & Co.がフィールドハーピングを通して作る世界です。


