
今回は、世界最大の高原地帯であるチベット高原にて観察した哺乳類を紹介します。チベット高原は最大都市ラサの空港で標高3,500mを超える環境で、今回訪れた最高標高は5,200mを超えました。太陽が近く日差しが非常に強いため、日中は気温が上がりますが、夜間は急激に冷え込むため、1日の寒暖差が30度に達することもあります。このような特殊な環境下で生息する動物たちは、非常に適応が進んでおり、観察も興味深いものとなりました。
チベットスナギツネ(Tibetan fox, Vulpes ferrilata)
独特な顔立ちが特徴のキツネで、元祖「ブサカワ」!とも呼ばれることも。主食は動きの速いナキウサギで、追跡・捕獲のために顔の筋肉が発達しています。寒さに耐える濃密な毛と、強い紫外線から目を守るために細める目が独特な表情を作り出しています。

ブルーシープ(Blue sheep, Pseudois nayaur)
標高の高い岩場で群れを作る反芻動物です。多い時には70頭規模の大群も観察されました。雪の中では青みがかって見えることからブルーシープと呼ばれます。

クチグロナキウサギ(Plateau pika, Ochotona curzoniae)
道路沿いや開けた草地でよく観察されました。短い手足で小競り合いをする姿が印象的です。チベットスナギツネの重要な餌資源となっています。

Royle’s pika (Rocky pika, Ochotona roylei)
岩場限定で生息するナキウサギの仲間で、クチグロナキウサギとは生息環境が大きく異なるため容易に識別できます。

チベットアカシカ(Tibetan red deer, Cervus elaphus wallichi)
大型のアカシカ亜種で、一時は絶滅危惧種とされていました。頑丈な体格、短い脚、四角い鼻口部が特徴で、尾や臀部の白色部分で識別できます。

クチジロジカ(White-lipped deer, Cervus albirostris)
口先が白くなる非常に珍しい鹿の仲間です。大きな体格が特徴ですが、角が薬用にされることから乱獲され、絶滅が懸念されています。

チベットノロバ(Tibetan Wild Ass, Equus kiang)
世界最大の野生のロバ。冬季には体毛が倍ほど伸び、非常に見応えがあります。

ヤク(Yak, Bos grunniens)
現地では家畜個体が大半ですが、標高の高い地域では野生個体も観察できました。大型で迫力のある存在です。

チベットヒグマ(Tibetan brown bear, Ursus arctos pruinosus)
真冬の観察でしたが、気候変動の影響か冬眠しない個体も多いようです。母子の4頭を観察しました。体色は薄く、二色に分かれるのが特徴です。

チベットオオカミ(Tibetan wolf, Canis lupus chanco)
高地に適応したオオカミの亜種で、厚く長い毛が特徴です(Woolly wolfとも呼ばれます)。標高4,000m以上に生息する貴重な種です。

ヒマラヤアカギツネ(Hill fox, Vulpes vulpes montana)
小型で毛の密度が濃いアカギツネの亜種です。警戒心が非常に強く、発見時にはすぐに逃げていきました。

チベットウサギ(Woolly hare, Lepus oiostolus)
早朝の渓谷で多数の個体を観察しました。同地域に生息するオオヤマネコ(英名:Eurasian lynx、学名: Lynx lynx)の大好物だそうです。

ウサギの仲間(Hare sp., Lepus sp.)
全力で走り去ったため種の判別はできませんでした。

チベットガゼル(Tibetan gazelle, Procapra picticaudata)
雄1頭に対して多数の雌が群れを作る群れ構造が見られました。

アルタイイタチ (Mountain weasel, Mustela altaica)
主食はナキウサギで、小柄ながら機敏な動きを見せます。

ヒマラヤジャコウジカ(Himalayan Mask deer, Moschus leucogaster)
大きな耳とカンガルーのように両足で跳ぶのが特徴です。基本的に夜行性ですが、日中も活動が観察されます。鹿の仲間ですが、大きな角は持たないそう。

以上、今回はチベット高原で観察できた哺乳類を中心に紹介しました。過酷な環境に適応した多様な動物たちの生態を、現地で間近に観察できた貴重な体験となりました。

