先日訪問したイランにおいて、ハーピング(爬虫類・両生類のフィールド観察)を行い、多様な生物たちに出会うことができました。本稿では、その観察記録を地域ごとにご紹介いたします。
イランは、国土は日本の4倍で砂漠の中を140kmで1日10時間ほど移動し、約2週間の滞在で7000kmを移動する大ハーピングとなりました。過酷な環境下での観察を可能にするため同行いただいた方々には心より感謝申し上げます。

イスファハーン地方
こちらは、首都のテヘランより車で8時間ほど移動した場所です。イメージする砂漠気候でサラサラの砂にところどころ生えた低木。手元の温度計は、到着した夕方で45度を超えていました。
こんな場所に生き物が生息するとはにわかに信じられないほど厳しい環境でしたが、多様な生き物を観察することができました。
- 英名:Brilliant Ground Agama、学名:Trapelus agilis
はじめに現れた、アガマの仲間。低木のわずかな日陰で餌となる昆虫を探していました。今回観察した個体はメスですが、南ホラーサン地方で観察したオスも写真を載せておきます。


- 英名:Blacktail Toadhead Agama、学名:Phrynocephalus maculatus
カエルのような顔の形から、ガマトカゲと呼ばれる本種ですが、暑い日中は砂漠の砂の中で過ごします。砂漠に潜る際は、前に砂を掻いて潜るのでなく、その場でモジモジと動き体を沈ませていく非常に特徴的な潜り方をすることで知られています。


- カイザリングスキンクヤモリ、英名:Persian Wonder Gecko、学名:Teratoscincus keyserlingii
夜になり、目の反射を頼りに探したのはカイザリングスキンキャモリです。大きな鱗が特徴的で、砂漠の真ん中に突如としてこの愛嬌ある顔が現れた瞬間は忘れられません。


南ホラーサン地方
イランの東部。今回のインターゲット、ヒョウモントカゲモドキをメインに探しにきましたが他にも様々な生き物を観察することができました。
- クモヤモリ、英名:Persian Spider Gecko、学名:Agamura persica
夕方、まだ火の高い時間帯でしたが、薄明薄暮のレオパを探すため早めにスタンバイしていたところ発券しました。ヤモリではありますが、このように日中行動することもあるらしく、異様に長い手足と相まって異質な感じを放っていました。


- 英名:Sindh Thread Snake、学名:Myriopholis blanfordi
ホソメクラヘビの仲間。歩いていると、膝丈ほどの植物の影に潜んでいました。一見ミミズですが、蛇腹、目、二股の舌など歴としたヘビです。

- カンムリヘビ、英名:Royal Snake、学名:Spalerosophis diadema
中東の砂漠に広く分布するヘビの仲間ですが、場所によって色彩が全く異なるため、様々な亜種に別れます。イランへは、今回2回目の渡航でしたが、前回観察した別の亜種と合わせて写真を紹介します。



- デラフシキリサキヘビ、英名:Derafshi Snake、学名:Lytorhynchus ridgewayi
過酷な砂漠に対応したためか、特徴的な顔をしています。爬虫類やその卵をを好んで食べるそうで、もしかすると野生のレオパを食べているのかもとも思えるサイズ感でした。

- チェルノフヒメレーサー、英名:Dwarf Snake、学名:Eirenis medus
岩場を歩いていると、ひょこひょこと現れたヘビ。小さくて早く動くことからヒメレーサーと呼ばれるそうです。メクラヘビほどではありませんが、このサイズで砂漠の灼熱に耐えられるのかと思うと非常に興味深い種です。

北ホラーサン地方
トルクメニスタンとの国境沿いの街で、今までの場所に比べると手元の温度計は、18度から30度ほどと寒いほどで、空も雲に覆われ湿度も50%を超えることもあり、砂漠は砂漠でも全く違う環境が広がっていました。
- ホラーサンアガマ、英名:Khorasan Agama、学名:Paralaudakia erythrogaster
移動中、車から道路沿いにある岩場で日光浴する姿を発見。オスメス同じ岩にいました。メスは、我々を見てすぐに隙間に逃げていきましたが、オスはなんとモビングをして威嚇してきた気の強いトカゲです。

- 英名:Persian Bent-toed Gecko、学名:Cyrtopodion persepolense
岩場で飛び跳ねるように移動する姿を見つけました。2個体観察できましたが、1匹は体の至る所にダニがついており、野生で生きる大変さを感じ取ることができました。

- 英名:Baluch rock gecko、学名:Bunopus tuberculatus
少しだけぽっちゃり体型なのがチャームポイントのヤモリ。砂漠の真ん中をヘッドライトで照らされて全力疾走を始めたため存在に気づきました。

- 英名:Eurasian Blind Snake、学名:Typhlops vermicularis
全長35cmほどになる、世界最小のヘビの仲間・メクラヘビにしては大きな種です。ちなみにアフリカには95cmほどにもなるメクラヘビの仲間もいるので、見にいきたいですね。

- 英名: Kopet Dagh bent-toed geck、学名:Mediodactylus spinicaudum
尻尾のギザギザが特徴的で、現地の方曰くなかなか珍しい種類だそう。図鑑を確認しても、わずかな地域で確認されているのみで今回は、移動中に見つけることができ非常に幸運でした。

- 英名:Caucasian Agama、学名:Paralaudakia caucasia
イランの北部に広く分布する種。全長19cmほどと中型のトカゲで、背中の模様が美しく、走り出すと逃げ足の早いのが印象的でした。

ゴレスタン地方
世界遺産ヒルカニア森林群が広がる地域で、今までの砂漠から景色が一変します。湿地帯や、森林も広がっており、イランの生物多様性の素晴らしさを実感させられました。
- 英名:Hyrcanian Wood Frog、学名:Rana pseudodalmatina
名前の通り、ヒルカニア森林群固有種のカエルです。小さな体ですが、乾いた林床で飛び跳ねる姿が印象的です。

- イースタン・ツリー・フロッグ、英名:Oriental Tree Frog、学名:Hyla orientalis
沼の周りでは産卵期なのか、鳴き声がひっきりなしに聞こえ、よく探してみるとなんと抱接したカップルを観察できました。

- 英名:Persian Marsh Frog、学名:Pelophylax persicus
沼に広がった水草の上に浮かぶようにして浮かんでいたカエル。全長も10cmほどと大きめで、見応えがあります。

- ヨーロッパヤマカガシ、英名:Ringed Snake、学名:Natrix natrix
ヤマカガシとあるが、毒は持たず、水の中で泳いでいたところを捕獲し撮影しました。なんと、舌を出して死んだふり。油断した際に、超高速で逃げるという非常に面白い生態をしていました。


- ヨーロッパヌマガメ、英名:European Pond Turtle、学名:Emys orbicularis
盛り上がった特徴的な甲羅が可愛いカメ。沼にいた個体を捕獲し撮影しました。季節によって、昼行性・夜行性を使い分けるそうです。

その他
- オオクチガマトカゲ、英名:Secret Toad-headed Agama、学名:Phrynocephalus mystaceus
口の両サイドに大きなひだがあり、威嚇して口を開けると口の大きさが2倍にも見えます。手で持って、ひだを観察しようと手を近づけると噛まれるので注意が必要です。

・レッドローチ、英名:Turkestan cockroach、学名:Periplaneta lateralis
個人的にとても嬉しかった生き物の一つ、野生のレッドローチ。世界中で繁殖されているゴキブリですが、野生の個体を見たことある方は少ないはず。

以上、今回のイランにおけるハーピングで観察した両生類・爬虫類+レッドローチをご紹介いたしました。以上、イランで観察した爬虫類たちの紹介でした。あと1箇所訪れたザクロス山脈は別の記事でご紹介します
各種、詳しくは載せられませんでしたので詳しい生息環境などご質問がありましたらお気軽にコメントなどお待ちしております!