世界には、毒を持つ珍しいトカゲ「ドクトカゲ」が2種類生息しています。今回私は、その中で最大種である メキシコドクトカゲ(英名: Mexican Beaded Lizard、学名: Heloderma horridum)を探しに、グアテマラを訪れました。この希少なトカゲを探す旅は、決して簡単なものではありませんでしたが、非常に貴重な経験となりました。

メキシコドクトカゲとは?
メキシコドクトカゲは、乾燥した地域に適応した大型のトカゲです。全長は最大で1メートル近くになり、ずっしりとした体型が特徴的です。その見た目だけでなく、毒を持つ点でも非常にユニークな生物です。
- 毒の仕組み
下あごの唾液腺が変化した毒腺を持ち、歯の溝を通じて毒を注入します。この毒は人間にとって致命的ではありませんが、激しい痛みや腫れを引き起こすため、不用意に触れることは危険です。ただし、メキシコドクトカゲは穏やかな性格で、こちらが攻撃しない限り人間に害を与えることはありません。 - 食性
主に鳥や爬虫類の卵を食べる特殊な捕食者で、樹木に登って巣を探すこともあります。他にも、小型の哺乳類や昆虫を食べることが知られています。尾に脂肪を蓄えて栄養を長期間保持する特性があり、乾燥地帯での生活に適応しています。 - 身体的特徴
ビーズのようなボコボコのお肌が特徴的で、英名はMexican Beaded Lizard(メキシコビーズトカゲの意)と呼ばれます。木に登るため非常に発達した鉤爪を持っています。太い尻尾は、レオパ(ヒョウモントカゲモドキ)などのように栄養を蓄えることができるようになっていますが、一度切れると再生しません。


観察記録
生息地へのアクセス
今回訪れたのは、人里離れた半砂漠地帯。公共交通機関、トウクトウクを乗り継いで向かいましたが、その道のりは簡単ではありませんでした。乾季のこの地域では、昼間の気温が40度近くに達することもあるため、活動時間帯は非常に限られます。
到着した夕方、少し涼しくなった時間帯にハーピングを開始しました。現地の方によると、乾季には主に夜間に活動することが多いとのことでした。一方、雨季になると昼間に体温を上げるために姿を現すこともあるそうです。しかし、一説によると生涯の95%を巣穴で過ごすといわれるこの種の活動時間は非常に限られていると思われます。
ナイトハーピング
タランチュラ、スカンク、フクロウなどを見ながら夜の砂漠をひたすらに歩きました。


英名:Middle American Screech Owl
学名:Megascops guatemalae

Amblypygi sp.
ハーピングも終盤、ついにメキシコドクトカゲを目にしたとき、その威厳ある姿に圧倒されました。驚いたことに、このトカゲは非常にゆっくりと動き、我々人間に対して警戒心を抱いていない様子でした。捕食者としての王者の力強さを感じました。

保全の必要性と現地の課題
メキシコドクトカゲは、世界で最も希少なトカゲの一つとされています。グアテマラでの野生個体数は200匹未満と推定されており、その生息地は農地開発や都市化によって減少しています。
現地の人々の間には、「ドクトカゲは災いをもたらす」といった迷信が残っており、誤解によって殺されることもあるそうです。私が訪れた地域でも、こうした迷信による被害を耳にしました。このような誤解を解き、正しい知識を広めることが必要だと強く感じました。また、エコツーリズムを通してこの貴重な種の価値を知っていただける機会になったかと思います。
また、一部の保全団体が、研究者の方・地元住民と協力して保全活動を行っています。トカゲの重要性を伝える教育活動や、生息地の保護プロジェクトが進められています。

最後に
今回の旅を通じて、希少なメキシコドクトカゲに出会えたことは、私にとってかけがえのない経験となりました。同時に、彼らの生息地が直面する課題を実感しました。
自然界には、まだ私たちが十分に知らない生物がたくさんいます。その生態を知り、保全に貢献するためには、私たち一人ひとりが正しい知識を持つことが大切です。このブログを読んだ皆さんも、ぜひメキシコドクトカゲやその生息地について関心を持ち、未来の保全に向けて行動を起こすきっかけになれば幸いです。そして、是非とも現地に探しに行ってその美しさを感じていただけましたら幸いです。

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