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クロアシデュクラングールをベトナムで探してきました
クロアシデュクラングール(英名:Black-Shanked Douc Langur、学名:Pygathrix nigripes)は、その美しい青い顔と特徴的な黒い脚が特徴的な、非常に希少なサルの仲間です。ベトナムとカンボジア、ラオスの熱帯雨林に生息しており、豊かな自然環境の中で独自な生き方をしています。クロアシデュクラングールは、見る者を圧倒する魅力に満ちていると思います。今回は、頑張って探してきましたので、他にも探しに行きたい方のお役に立てればと思い、生態、食性、社会性などシェアさせていただければと思います。
クロアシデュクラングールの特徴
クロアシデュクラングールはその名の通り、脚が黒く、体全体は濃いグレーから黒色の毛で覆われています。胸部や背中はやや薄い色をしており、口元やまぶたの周りには白い毛が生え、印象的な顔立ちをしています。なんといってもこの青いお顔は印象的ですね。この独特な配色は他のサルには見られない特徴で、熱帯雨林の中で非常に目を引く存在です。
また、彼らの顔には温かみのある表情があり、優雅さと穏やかさを感じさせる独特の魅力を持っています。目が大きく、相手をしっかりと見つめるような眼差しが特徴で、その神秘的な風貌が多くの人を魅了します。またその魅力が仇となり、ペット用の密漁が絶えず数が激減したとも言われています。
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クロアシデュクラングールの生息地
クロアシデュクラングールの生息地は、ベトナムとカンボジア、ラオスに広がる熱帯雨林です。彼らは標高500〜1200メートルの山地の森林に生息し、そこで主に樹上生活を送っています。熱帯雨林といえば、生態系の豊かさや生物多様性の高さが有名ですが、クロアシデュクラングールもまた、その生態系の中で特有の地位を築いています。
こうした熱帯の森林は、食物や隠れ家だけでなく、サルたちが仲間と安全に過ごせる貴重な生息地でもあります。クロアシデュクラングールは昼行性であり、日中は仲間と一緒に木々の間を移動しながら、餌を探したり、身を隠したりして過ごします。夜になると、より高い枝に移動して、捕食者から身を守るそうです。
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クロアシデュクラングールの食性
クロアシデュクラングールの主な食物は植物で、特に葉や果物、花、種子を好みます。彼らの食生活はそのほとんどを植物に依存しており、このため生息地となる森林が豊かな植物相を保っていることが重要です。通常、彼らは木々の中で生活するため、地上の動物と競合することがほとんどなく、樹上での生活に適した行動や食性を持っています。
クロアシデュクラングールは、森林の中で上手に食料を見つけ、また、食べ残しや種子の散布によって森林再生に貢献していると考えられます。彼らの活動が森林の生態系を支える一端を担っているため、彼らが生息する森林の維持と保護が他の動物や植物にも良い影響をもたらします。植物を消化するため、牛などの反芻動物と同じように胃が4つに分かれており、その結果お腹が大きくまるまるしているそうです。決して食べ過ぎているわけではないのですね。
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社会的で知的なクロアシデュクラングールの行動と生活
クロアシデュクラングールは社会的なサルであり、通常は5〜10匹のグループで生活しています。彼らは仲間との絆を大切にし、グループ内でコミュニケーションを取り合います。特有の音声やボディランゲージを用いたコミュニケーションが発達しており、互いに情報を交換することで集団生活を維持しています。
また、彼らのグループは分担制であることが多く、若い個体が食物を探したり、安全確認を行ったりする役割を担う一方、成長した大人の個体は子どもたちの面倒を見たり、グループの秩序を保つための役割を果たします。このような行動が、彼らの社会的な結びつきを強め、グループ全体の安全と生存を確保するために役立っていると言われています。
探し方
まず、彼らは葉っぱを好んで食べるためかなりの時間を食事に費やします。生息地は、お昼の時間帯はかなり高温になりますので早朝&夕方の時間のほとんどを餌を食べて過ごしています。また、集団で行動をしているため1匹見つけたらほとんどの場合近くに群れがいることが多いです。気が弱いため、ブタオザル、カニクイザルなど同地域に生息する他のサルが近くにやってくるとすぐに別の場所に移動します。以上のような点に注意をしながら探すと見つけやすいかなと思います。
絶滅の危機にあるクロアシデュクラングール
クロアシデュクラングールは、森林破壊や密猟などの人間の活動によって生息地が減少し、国際自然保護連合(IUCN)によって絶滅危惧種として指定されています。特に、違法な伐採や農地拡大が生息地の減少に大きな影響を与えています。また、その美しい毛並みや骨、ペットとして飼育するためなどを目的とした密猟も深刻な問題です。密猟された個体は、知識の不足により餌としてバナナなどフルーツを与えられて主食である葉っぱにありつけずに衰弱してしまう。通常、集団行動をしている社会性のある生き物ですので、1匹では餌を撮ることもできずに衰弱してしまう。などが原因で短い時間で亡くなってしまう事が多いそうです。
彼らの生息地を守るためには、森林保護活動や地元のコミュニティと協力した取り組みが必要不可欠です。地域の観光業がエコツーリズムにシフトし、持続可能な形での保護活動に貢献することが期待されています。現在は多くの自然保護団体が、地元の住民と協力しながら、クロアシデュクラングールの保護活動を展開しており、環境教育や観光客向けの啓発も行われています。
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エコツーリズムによる保護の重要性
クロアシデュクラングールの保護には、エコツーリズムが大きな役割を果たします。エコツーリズムとは、環境に配慮した観光の形態で、現地の生態系や生物多様性の保全に寄与しながら、地域経済にも利益をもたらすものです。クロアシデュクラングールのような絶滅危惧種に焦点を当てたエコツーリズムは、訪れる人々にとって学びの場であるだけでなく、保護活動を支援する資金源ともなります。
現地のガイドは、観光客にクロアシデュクラングールの生活や生態についての情報を提供し、その美しさや保護の重要性を伝えています。このような教育的な観光は、訪れる人々に持続可能な観光の重要性を理解してもらう良い機会となり、クロアシデュクラングールだけでなく、他の生態系全体の保護にもつながります。
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未来を守るため
クロアシデュクラングールの保護は、単なる生き物たちの保存活動にとどまりません。彼らの生息地である熱帯雨林そのものを守ることが、地域の気候安定や水源の確保、生物多様性の維持にもつながります。私たち一人ひとりがエコツーリズムや保護活動に関心を持ち、現地の活動をサポートすることが、クロアシデュクラングールや他の動物たちの未来を守る一助となるそうです。
まとめ
クロアシデュクラングールは、その希少さとシャイな性格から見つけるだけでも大変で、さらに写真を撮影するとなると非常に大変です。私は、ジャングルの中を歩き回り5日目にやっと写真を撮ることができました。見かけることはあってもジャングルの中で、抜けた場所に出てきてくれるのは至難の業です。しかし、この青い顔のつぶらな瞳と目が合った瞬間の感動は一生忘れられない経験となりました。
皆さんもこの美しいクロアシデュクラングールを探しに、ジャングルへ出掛けてみてください!
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Photo & Text by Wataru HIMENO