世界でもイラン西部のザクロス山脈にのみ生息するクモダマシクサリヘビ(Spider-tailed Horned viper:Pseudocerastes urarachnoides)を探してきました。
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クモダマシクサリヘビは、その名の通りクモに見せかけた尻尾を使い、エサなどの資源が限られる厳しい砂漠に生息する鳥などを捕食するヘビです。
生息地は、石灰岩で囲まれた急勾配の丘が連なる異様な絶景が広がる場所でした。厳しい環境のため、地元の方も滅多に近づかないこのエリアに入るには、許可証などの取得も必要でそういった意味でも人を寄せ付けないのかもしれません。
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この丘には無数の穴が空いておりこの穴に潜むヘビを探します。
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何度も崖から落ちそうになりながらひたすら歩き、いかにこの種を見つけるのが難しいのかと言うことを悟り、諦めかけたその時、岩の隙間に違和感を覚えました。双眼鏡で確認するといました!正真正銘のクモダマシクサリヘビでした。
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自分でも見つけたことが信じられないほど、完璧なまでに周囲に溶け込んだその姿。感動の一言です。しかし、このポジショニングでは肝心なクモの尻尾が見えません。より良い観察を目指しさらに歩き、最終日の夕方にやっとその尻尾を見ることが出来ました。
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この後、一瞬で巣穴に入ってしまい観察自体は1分ほど。この1分のためにいったいどれだけの時間を費やしたかと思うと気が遠くなりそうでしたが大満足の結果となりました。
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クモダマシクサリヘビは、一年中鳥ばかりを食べているのかと思っていましたが、現地の方から話を聞くと鳥を捕食するのは一年でもかなり限られた時期のみだそう。また、このクモの罠にかかるのはほとんどがこの地域をあまり知らない渡り鳥だそうで、定住する鳥たちはクモの罠を見抜いている種も多く存在しているそうです。
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渡り鳥の多くなる春は、繁殖のために活発になる時期と重なります。おそらくですが、餌の限られるこの地域で繁殖のための莫大なエネルギーを得るには鳥を捕食することが有利に働き、このクモのような尻尾が有利に働くようになったのではないかと思います。
なんと帰り道に、クモダマシクサリヘビの若い個体にも遭遇しました。
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なんと若い個体は、クモの尻尾を持っていませんでした。原型となる鱗の形は備えているのですが、クモと呼ぶにはほど遠くパッと見るとクモダマシクサリヘビとは思えないほどでした。
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若い頃は、トカゲやヤモリなどの爬虫類に加え、虫なども捕食することも多いそう。しれば知るほど不思議です。しかし、その石灰岩に完璧に擬態した体は小さい頃から健在でした。
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こんなヘビはザクロス山脈を除いて世界のどこにも生息していません!これから見に行かれる方の参考になれば幸いです。