ガラパゴスウミイグアナ(学名: Amblyrhynchus cristatus)は、海で餌を取ることができる唯一のトカゲとして知られ、エクアドル・ガラパゴス諸島にのみ生息する固有種です。ガラパゴスを象徴する生物の一つで、その特異な行動と海洋環境への適応能力で広く知られています。
外見と亜種の特徴
ガラパゴスウミイグアナには11の亜種が存在し、各島ごとに若干異なる特徴を持っています。中でも、イサベラ島とフェルナンディナ島の個体は最大サイズに達します。通常は黒色で、日光を吸収して冷たい海水から体温を回復させますが、繁殖期にはオスの色が大きく変わります。この色変わりは亜種ごとに異なり、エスパニョラ島やフロレアナ島のウミイグアナは鮮やかな緑色と赤色に、サンタクルス島の個体は赤と黒に、フェルナンディナ島ではくすんだ緑色とレンガ色に変わります。一方で、若い個体は通常、黒色に背中に沿った明るい縞模様が特徴です。
行動と驚くべき適応能力
陸上では動きが鈍いガラパゴスウミイグアナですが、水中では優れた泳ぎ手です。彼らは強力な爪を使って岩にしっかりとしがみつき、海流の中でも餌となる海藻を摂取します。大きな個体は沖合まで出て行き、海中で岩に付着した海藻を食べますが、小さな個体は潮が引いた際に露出する岩場近くで採餌します。
ガラパゴスウミイグアナの最もユニークな行動の一つは、体内の塩分を調整する方法です。彼らは、海藻を大量に食べるため、塩分濃度が高くなります。ウミイグアナは、鼻腺を使って血液から余分な塩分をろ過し、その塩分を「くしゃみ」のように鼻から排出します。このため、鼻先に塩の結晶がついて、まるで塩の帽子をかぶっているように見えることがあります。これは、体内の塩分濃度を効果的に管理するための驚くべき適応です。
社会性と体温調整
ウミイグアナは、社会性の高い動物ではありませんが、特に寒い夜には体温を保つために集団で固まりあいます。また、日中は太陽の下で体を温め、黒い鱗を使って太陽の熱を吸収します。この体温調整を終えて十分に温まると、再び海に戻り、海中での採餌を行います。水中では、エネルギーを節約するために心拍数を通常の半分まで減少させ、できるだけ長く餌を探すことができます。
生息数への脅威
ガラパゴスウミイグアナはエクアドルの法律で保護されており、ワシントン条約(CITES)附属書IIにも記載されています。しかし、近年では外来種である猫や犬が人間によって持ち込まれた結果、特に幼体が捕食され、生息数に大きな影響を与えています。また、エルニーニョ現象により餌が減少し、一時的にウミイグアナの個体数が85%も減少したこともあります。加えて、海洋プラスチック汚染も新たな脅威として認識されており、微小プラスチックが生態系に及ぼす影響が懸念されています。
まとめ
ガラパゴス諸島でのみ見られるガラパゴスウミイグアナは、そのユニークな行動と適応能力で自然界の奇跡と言える存在です。私もいつか再びエクアドルを訪れ、この驚くべき生物と共にダイビングを楽しみたいと思います。彼らの独特な生態を学び、保護の重要性を考えることは、私たちが彼らを守るためにできる一歩です。
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